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日本語の曖昧性は文化と専門知識で補完される

  • t-kobayashi58
  • 2 日前
  • 読了時間: 3分

日本語の係り受けの曖昧問題、修飾語の後に複数の名詞が来ることが混乱の原因となります。初めに簡単な例。「緑の丘の上の家」は「緑の」の修飾語の後ろに「丘」と「家」の2つの名詞があります。つまり、丘が緑なのか、家が緑なのか、日本語の文法的にはどちらも可で、正解はこの文を書いた人にしかわかりません。通常は直後の名詞を指すと考えるのが基本ですが、「丘が緑」であることをはっきりさせるためには「緑の丘の上に建つ家」のように「建つ」という動詞を挟んで係り受けを遮断するのがいいですね。一方、「家が緑」であることをはっきりさせるためには語順を変えて、「丘の上の緑の家」のように「緑の」という修飾語の後ろに「家」という名詞を1つにすれば済む話です。


では次の例、「明るい大阪のオバちゃん」という文があったとしましょう。「緑の丘の・・・」と同じ構造ですので、「明るい」は「大阪」も「オバちゃん」も指すことができますね。しかし、「明るい大阪」はギリギリ変ですので、「大阪のオバちゃん」を一塊として「明るい」は「オバちゃん」を指すと考えるのが普通です。では「緑の丘の・・・」構文同様、「大阪の明るいオバちゃん」にしても同義かというと、日本語では微妙に違ってきます。それは、「大阪のオバちゃん」が「元気でおしゃべりで派手で人懐っこい」という共通の文化的イメージがあるので(いい意味で(笑))、「明るい大阪のオバちゃん」はそうしたキャラの上書きの人格が浮かびあがります。一方、「大阪の明るいオバちゃん」は単に「大阪在住の明るい性格のオバちゃん」というイメージにとどまります。これが「明るい静岡のオバちゃん」であれば「静岡のオバちゃん」に特定の文化的イメージはないので、「静岡の明るいオバちゃん」としても意味は変わりません。英訳する際は、前者は「明るい」を単にbrightとするよりも、friendlyや場合によってはsassyのような単語を選んだ方がニュアンスが出るかもしれません。しかし弊社の扱うビジネス翻訳ではそこまでの意訳はせずに原文に忠実に訳すことを心がけています。


もう1つの例、「補欠の監査等委員である取締役」も同じ構文です。「補欠の」か「監査等委員」を指すのか「取締役」を指すのか。勿論日本語の文法的にはどちらも可能性がありますが、これは会社法を知ることで答えが出ます。これは「監査等委員である取締役」が一塊ですので、「補欠の」は「取締役」を指すことになりますが、「監査等委員である取締役」は制度上の固定語彙であるため、決して「監査等委員である補欠の取締役」とは書かれません。読み手が会社法を知っていることが前提で書かれているのです。


外国語訳は日本語の意味がわかれば8割完成、とも言えます。フラットに読めばいいのか、背景にある文化や制度が意味を決めるのか、日本語の解釈は一つとして同じものがなく、本当に難しいと言えますね。

 
 
 

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